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◆「命」という字は、「令」と「口」から成り立っている。白川静の「常用漢字解」によれば、「令」は、ひざまずいて神のお告げを受ける人の姿を、「口」は神にささげる祈祷文を納める器を、意味するという。新潟県中越地震で土砂に埋まった親子三人の乗用車から、長男の皆川優太ちゃんが救出された。救助活動の明暗を分ける節目は、一般に「三日間」といわれる。飢えと寒さに耐えて発生から5日目、生還の模様を伝える映像がにじんで見えた方もあるだろう。救助のさなかも、幾度となくよく余震が襲い、巨岩の累々たる山肌を隊員が不安げに見上げる場面があった。まだか、まだか、という焦燥の思いが募ったのも確かだが、死と隣り合わせの現場に立つ人には酷に過ぎるかもしれない。さりとて、これほど多くの人が心をひとつにしてテレビ画面に祈りつつ、「命」をみつめた例をしらない。
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